用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



読み合わせ(よみあわせ)
2013.1.17 OA


芝居の稽古の初期段階に、それぞれの役者が台本を声に出して読む稽古を「読み合わせ」と言います。

ほとんどの稽古場では、この『読み合わせ』が、実質的な最初の稽古という事になるでしょう。言葉の発音、地名や役名など漢字の読み方、用語の意味といった基本事項を共有する事から、役の感情や間、人間関係を探る事まで、『読み合わせ』が全ての稽古の基本を作る作業と言ってもいいでしょう。
役者は当然、それぞれに台本を読み込んでから『読み合わせ』に臨みますが、そうやって読み込んで自分が想像しているものが、最初から演出家や共演者と同じという事はまずありえません。この『読み合わせ』を通して、共演者と理解を深め、芝居を共有していくのです。
また、芝居をやっていない人から見ると、『読み合わせ』というと台本を手に持って座って読んでいる段階なのでスタッフさんはやる事がないように思ってしまいがちですが、そんな事はありません。舞台監督をはじめ、各部門の責任者もこの稽古を通して演出家がどういう芝居を作りたいか、どんな表現を求めているのかを探り、共有していくわけです。

『読み合わせ』は稽古の最初期段階でありながら、互いが互いの考えを必死に読み取ろうとし、解釈にズレがあればそれを修正し、芝居の方向性を決定づける、とても緊張する稽古です。慣れない役者さんは表現に気を取られてしまいがちですが、ここでまず重要なのは表現ではなく、台本と演出への理解です。

ちなみに脚本家にとってもこの読み合わせ、特に初読みは結構緊張するもので。例えばシチュエーションコメディ作家として有名な三谷幸喜さんもあるエッセイで、「役者が噛んだりすれば『読みにくいセリフだったかな』と心配になり、ニュアンスが違えば『そういう意味で書いたんじゃない!』と憤慨し、ウケるハズのシーンで稽古場が盛り上がらないと『面白くなかったか』とへこみ、結果、同席しているだけで読んでいない脚本家の方が、終わる頃にはヘトヘトになっているのである」とおっしゃっていました。

ま、こんな風に書くとどんな恐ろしいピリピリした稽古なのかと思われそうですが・・・なんだかんだ言っても、これからの稽古、そして公演を具体的に想像できるようになり、とてもワクワクする楽しい時間なんですよ。


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