用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



緞帳(どんちょう)
2011.08.18 OA


劇場で舞台の最も客席側にあり、お客様の目から舞台を隠し、舞台と客席を区切る役割を持つ大きな上下する幕を「緞帳」と言います。左右に開閉する引き幕と違い、上下に開閉する垂れ幕である事が緞帳の特徴です。

かつて、江戸時代には幕府から興行を許可された座(現在の劇団のようなモノ)のみが「定式幕」という左右に開閉する引き幕を使用する事が許されました。つまり、引き幕を使用する事は幕府によって正式な許可を得た芝居の証明であったわけです。
公認されていない芝居小屋では引き幕を使う事が許されませんでした。そこで生まれたのが「緞帳」です。当時は緞帳のかかっている芝居やそこに出ている役者の事を、「緞帳芝居」「緞帳役者」などと言って格下扱いしていたそうです。

現在では開演前や休憩中にお客様の目を楽しませるため、様々な絵柄を施した緞帳が多く見られます。例えば西陣綴で有名な綴織で織り上げられた「綴織緞帳」などは日本独自の幕としても有名です。
最近の大劇場では広告が織り込まれた緞帳や、その芝居のためのオリジナル緞帳も見かけますね。

緞帳は大きい物だと総重量が1トンを超す事もある重い幕です。手織りの高級品は複数の職人が長い期間をかけて仕上げるため、何千万円もするものもあります。

また、洋風の舞台で使われる、ふわふわした感じのヒダがある緞帳は「絞り緞帳」と言います。これは幕の裏側にワイヤーを通すことでヒダを実現しているため、ワイヤーの巻きあげ方で緞帳の上げ方に変化をつけることが出来るようになっています。
ヒダがある幕といえばオペラで使用される「オペラ・カーテン」がありますが、こちらは左右に割れて開くので「引き割り幕」の一種になります。

現在は、引き幕であっても「引き割り緞帳」と呼んだりするようになってきています。
最初に書いたように緞帳とは「上下に開閉する幕」のことを指すので左右に開閉する引き幕を緞帳と呼ぶのはおかしいのですが、興行の許可という面からの区別がなくなった今では、「舞台最前面にある大きな幕=緞帳」というくらい広い意味に使われるようになってきたのかもしれません。


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