わらう(わらう)
2011.09.01 OA
舞台の上から物を片付けることを「わらう」と言います。
例えば小道具を片付けてほしい時に、「そこの小道具、わらっといて」という風に使います。「ハケる」と同じ意味ですが、人にも物にも使う事がある「ハケる」と違い、こちらはもっぱら物に関してのみ使われます。
(ハケるは両方に使いますが、どちらかというと人に関して使う事が多いですね)
この「わらう」というのはどうやら、大道具さんの用語から生まれたようです。
元々、「わらう」とは道具のある部分が緩んでいる様子を指した言葉でした。縛った部分が緩くなってガタガタしている、だとか、釘が緩んで道具が傾いでいる、だとか。そういう様子を「わらう」と言ったのです。
緊張などで膝がガクガク震える様子を「膝がわらう」と言いますが、あれと同じですね。
で、わらっている道具はどうするか。もちろん、直すために一度舞台上から片付けなければならないですよね。「その道具わらっているから片付けろ」という言葉が、後に「その道具わらっておけ」という言葉に省略されていったようです。
ハケるに比べると使用頻度の低い言葉ですが、それだけに、意味を知らなくて新人が戸惑う事も多いこの言葉。
「おい、そこの机をわらっとけ!」と先輩に言われて、意味もわからず机に向かって爆笑してみたら舞台監督にめちゃくちゃ怒られた、というようなエピソードは枚挙に暇がありません。本人は真剣に指示を実行したのでしょうけど、ピリピリした本番直前の舞台監督さんにはふざけているように映ってしまったのでしょうね。確かに、本番直前の忙しい時に、一人で机に向かって爆笑している後輩がいたら、「この野郎!」という気になるのもわかります。
しかしそういう状況だからこそ、舞台監督さんにも「わらって」いてほしいですね。