用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



プロンプター(ぷろんぷたー)
2011.11.24 OA


俳優は台本に書かれた全てのセリフを一字一句完璧に覚える。これが俳優としての常識・・・というのは建前で。現実には大量のセリフをいつも100%間違えずに言える保証はないし、本番当日にセリフが変更される事もあります。
そうした時、万が一、出演者がセリフを忘れてしまった時に、お客様から見えない場所からその出演者にセリフを教える役目を「プロンプト」、そうした役目を担う人の事を「プロンプター」と言います。

元々はイギリスの演劇界から生まれた言葉で、舞台上手にプロンプターがいる事が決まりだったとか。そこから、上手の事を「プロンプト・サイド」と呼ぶようになりました。
しかしアメリカでは逆に、緞帳などの操作盤が下手にある劇場が多く、そこにプロンプターを配置した関係で下手を「プロンプト・サイド」と呼ぶそうです。

日本の伝統芸能でも似た役割の存在は古くからあります。能では「後見」と呼ばれる役者が舞台後方や鏡板前に控え、舞台進行の補助をするのですが、この「後見」の役者が必要に応じてプロンプトを行います。
歌舞伎でも「後見」は存在しますし舞台進行の補助を行いますが、通常、プロンプトを行うのはこれとは別の役者で、襖や衝立などの舞台装置の陰に隠れているそうです。

また、オペラでは少なくとも17世紀には専門のプロンプターが配置されていました。オペラのプロンプターは演劇のように舞台袖ではなく、中央最前部に設けられたプロンプターボックスに配置される事が多く、時には指揮者と同様にタクトを振る事もあるとか。オペラはその特性上、音楽的素養も必要不可欠であるため、プロンプターも声楽の研鑽を積んだ者でないと勤まらない場合が多いそうです。

プロンプターを配置し、いかなる場合も舞台の進行が停止する事のないよう万全を期し、しかし、彼らが活躍しないで済むよう舞台上の役者ががんばる。
彼らの存在によって安心感を持って舞台に立てるわけですが、頼りすぎないように気をつけないといけませんね。


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