台詞/科白(せりふ)
2012.02.02 OA
舞台や映像で俳優が話す言葉を「せりふ」と言います。脚本に書かれているうち、実際に演者によって発声される部分の事ですね。
さて、この「せりふ」という言葉は、江戸時代初期から使われていました。語源には諸説ありますが、「競い合って話す=競り言ふ(せりいふ)」が詰まって「せりふ」になったという説が一般的なようです。他には、それより古い言い方で「世流布(せるふ)」などという言葉もあり、こちらが語源になったのでは、という説もあります。
現代では「セリフ」とカタカナ表記するケースも多いのですが、漢字表記する際には「台詞」もしくは「科白」と書きます。それぞれ稀に「だいし」「かはく」と読ませる事もあるようですが、基本的には「せりふ」に対する当て字です。
「科白」は中国語的表現。「科」は「しな」とも読みます。「しなを作る」などの「しな」ですね。仕草や動きを表す語です。「白」は「告白」を例に出せばわかりやすいでしょうか。「言葉を告げる=告白」ですから、「白」はことばを表す語という事になります。
つまり、「科白」は「役者のしぐさとことば」を表していると言えます。
一方の「台詞」。「詞」は「歌詞」の「詞」ですね。「節をつけて歌う言葉=歌詞」ですから、これも「白」同様、ことばを表す語です。「台」は「舞台」の「台」、と解釈して「舞台詞(ぶたいことば)」の上の部分(「舞」)が省略された言葉、という説や「台帳(台本、脚本の古い言い方)に書かれた詞=台詞」という説があります。
こちらは語源からすると、特に「役者のことば」について表していると言えます。
もちろん日本語の「せりふ」は上述の通り「舞台上で俳優によって発せられる言葉」という意味であり一般に仕草は含まれませんからどちらの漢字を使っても意味は同じなのですが、強いて使い分けるなら「台詞」は脚本に書かれた言葉を表す時に、「科白」は役者によって発せられ動きと合わさった時に使ってみるといいかもしれません。
(ちなみに、歌舞伎の世界では現在でも「科白」を使う事が多いようです)