俳優(はいゆう)
2012.02.16 OA
映画や演劇などで役を演じる人のこと。『役者』とほぼ同義ですね。
『俳』という字は「常識にそむいた一風変わったふるまいのこと」という意味を持ちます。『俳句』の『俳』でもありますが、あれも同じ意味合いで「常識にとらわれない言葉遊び」というところから来たと思われます。
また、『優』という字が使われているのは一般に「優れている」というところからの由来と思われがちですが、語源としては「面を付けて舞う人、役者、楽人のこと」という意味を持ちます。
つまり漢字の元々の意味としては、「常識にとらわれず舞い踊る人」が『俳優』であるということでしょうか。
ではこの『俳優』という字は、一体いつから使われていたのか。
元の元をたどると、なんと神話の時代、古事記までさかのぼれます。
古事記や日本書紀に登場する芸能の神にして日本最古の踊り子、アメノウズメ(古事記では天宇受賣命、日本書紀では天鈿女命と表記する)という女神がいます。彼女にまつわる最も有名なエピソードは天岩戸伝説でしょう。細部を端折って簡単に紹介すると、以下の通り。
弟のスサノオノミコトの乱暴な振る舞いに怒った太陽神、天照大神が天岩戸と呼ばれる洞窟に閉じこもってしまいました。
太陽神である彼女がいなくなったため、世界は闇に覆われ、様々な禍が発生します。八百万の神々は集まってどうすればいいか相談、知恵を司る神である思金神の発案により、ある女神が天岩戸の前で激しく踊りました。神々はそれを見て大笑い。
天照大神が「自分がいなくなって闇に包まれているはずなのに、なぜみんな楽しそうなんだ」と岩戸から顔を出したところを、力自慢の天手力男神が引っ張り出したため、世界に光が戻った、というお話。
(ちなみにこれは古事記の記述。日本書紀では多少内容が異なりますが、大筋は同じ)
もうおわかりでしょう。天岩戸の前で踊りまくって神々を大笑いさせた女神、まさに「常識にとらわれず舞い踊った」女神こそが、アメノウズメです。
そしてこのアメノウズメの所作を『わざおぎ』と言い、これに『俳優』という字を当てたそうです。『わざおぎ』の意味は、「面白おかしい技を演じて、歌い舞い、神や人の心を和らげ楽しませること。また、それを行う人」という事で、まさに芸能とはそういう事なのでしょう。
闇に包まれ打ち沈んでいた八百万の神々の心を和らげ、楽しませ、ついには世界を救ったアメノウズメ。
どんな踊りだったのか、見てみたいものですね。