用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



友情出演/特別出演(ゆうじょうしゅつえん/とくべつしゅつえん)
2012.07.26 OA


テレビや映画などの役者のクレジットを見ていると、時々『友情出演』や『特別出演』という表記がついている場合があります。 どちらも「他の役者さんとはちょっと違うんだよ」という 意味なのはなんとなくわかると思いますが、ではそれぞれどういう意味なのか説明してと言われたらちょっと困るのではないでしょうか。

まず、友情出演。簡単に言ってしまえば、「格安のギャラで出演してもらうこと」。
なんらかの理由で通常ではありえない額(時にはゼロの場合も)で出演してもらうのです。
出演俳優やスタッフの個人的な付き合いでお願いするケース、また、出演俳優と同じ事務所から応援として出演するケースが多いため、「友情」と呼ばれたのですね。
前者のケースで有名なのが、ハリウッド映画の「オーシャンズ11」。あの映画は主演のジョージ・クルーニーとソダーバーグ監督が立ち上げた会社の最初の作品で、 クルーニーが映画界の友人にお願いしてまわり、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、アンディ・ガルシア、マット・デイモンなど普通なら共演しない主役級が揃いました。 もちろん、普通に彼らをキャスティングすると出演料だけで尋常ならざる額になるわけですが、そこが『友情出演』。ギャラはかなり安く交渉されていたそうです。
後者のケースだと、ジャニーズ事務所がよく行っていますね。若手の応援に先輩がちょっと出演していたり、同じグループのメンバーが出演している作品に他のメンバーが顔を出したり。
また、俳優が自ら売り込み、格安で出演した場合に『友情出演』が用いられることもあります。

そして、特別出演。こちらは「格上の俳優に脇役ながら出演してもらうこと」。
俳優もキャリアを積んでいくと、それなりの役でないと「格」に合わない、ということが出てきます。主演でなくては引き受けられない、とか、助演でもそれなりに出番の多い役を、など、俳優・事務所側の要望が強くなっていくわけですね。
しかし制作サイドからすると、出番は少ないが重厚な大物に出て欲しい場合もあるわけで。そんな時に便利なのが、特別出演。「本来ならこんな小さな役でお願いするわけにはいかないんですけど、特別出演ということにしますのでぜひ」と口説き落とすわけです。 つまり、特別出演というのは簡単に言ってしまえば、「今回はこの役を演じているが、本来はもっと格の高い俳優なんだ」という事を表しているんです。役者・事務所・スポンサーへの配慮ですね。
特別出演の場合は、ギャラは通常と同程度。出演料絡みで特別出演と冠する事はあまりないようです。
また、キャストロールの序列対策として特別出演がつけられる場合もあります。出演者の名前順というのはかなり重要で、一番最初に出てくるのは当然主演俳優ですが、次に重要な 俳優に割り当てられるのが、キャストロールの最後(「トメ」と言うそうです)。しかし同じ程度の格の大物俳優が二人いて、どちらを「トメ」にもってくるかで争った場合、一方には「特別出演を つけますので」ということで納得してもらう事もあるそうです。

なんだか素人にはわかりにくいこれらの用語。簡単にまとめると、友情出演は主に「出演料」が問題になり、特別出演は主に「役者の扱い」が問題になる場合につけられるわけです。
それを知って見ると、キャストのクレジットに隠されたいろんな関係性が見えてきて、ちょっと面白いかもしれませんね。


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