差し金(さしがね)
2014.02.27 OA
陰からこっそりと人を操ることを「差し金」と言いますよね。まぁ実際使ったことはあまりないかもしれませんが、映画や小説で「誰の差し金でこんな事をっ・・・!」みたいな台詞はよく聞いたことがあると思います。この「差し金」も、舞台から生まれた言葉です。
歌舞伎において蝶や鳥など空中を舞うものを動かす場面では、黒く塗った竿の先に針金や鯨のヒゲなどを付けて、その先端に作り物の蝶や鳥を貼り付けます。この竿を黒子が動かし、さも自由に動いているかのように見せるのです。この「見えないようにしつつ操る」ための竿を、「差し金」と言います。 「差し金」を使って空を飛ばせる、あるいは小動物を地面に這わせるといった手法は、歌舞伎以外の舞台演劇でも用いられます。学芸会なんかでやった事のある人もいるでしょう。実は由緒正しい、先人の知恵だったんですね。
また、人形浄瑠璃の文楽人形では、人形の指や手首を動かすために細長い棒が仕込んであって、この棒のことも「差し金」と呼ぶそうです。こちらが由来だという説もあります。
まぁいずれにせよ、お客さんにわからないように、「差し金」を使って何かを操る様子からきているわけですね。
お客さんを楽しませるため、より物語の世界に入り込んでもらうための工夫が、「裏から操る」なんてなんだか悪い意味のような単語として定着しているのはちょっと不思議な気もしますが、それだけびっくりしたってことでしょうね。