用語解説コーナー 血が滾舞台用語辞典



黒幕(くろまく)
2014.02.27 OA


表に出ず、裏で計画したり指図をしたりする人、姿を見せずに糸を引き、事態を操る人の事を「黒幕」と言います。見た目はヨボヨボのじいさんのように見えながら「彼は目障りですねえ」の一言で政治家を闇に葬ってしまえるような人物を指して、「政界の黒幕」とか言ったりしますよね。 これ、歌舞伎が由来なんですが、元々は何を指していたか、おわかりになりますか?そう!背景に使われる黒い幕の事を「黒幕」と呼んでいたのですよ!・・・わかりますよね、はい。

歌舞伎ではこの黒幕、夜のシーンで背景に使ったりする以外にも、場面の変わり目で大道具を隠したり、死んだ役の役者を隠して退場させたりするのにも使われます。お客さんからはその裏側は見えないわけですが、前のシーンの後始末だったり次のシーンの準備だったりが着々と、そしてこっそりと行われているわけです。「一般人から見えないように事態を操っている」っていう意味はこういうところからきてるんですね。 また、この幕の裏から役者に台詞を教えているのではないか、そのためにあるのではないかと思ったお客さんもいたようで。そうした噂が広がって、「裏から指示を出す人」という意味が強くなりました。(もちろん、幕の裏からプロンプターが台詞を教えることもありますが、本来の主たる役目はそれではありません) さらに言えば、政治権力の中枢であった「幕府」とか、相撲の「幕内」とか、「幕」には立ち入りがたい場所や一定以上の地位を持つ人を表す単語が多いので、裏で操る人の中でも特に権力者に対して使う事が多くなっていったとか。

ちなみに英語では、単に黒い幕のことは「black curtain」と言いますが、「陰で糸を引く人」という意味の場合は、文字通り「ワイヤーを引く人」=「人形遣い」という意味の「wirepuller」と言うそうです。主にアメリカで使われる俗語ですが、日本にも同じ「人形遣い」が由来の単語、「傀儡」がありますよね。あれも舞台由来です。詳しくは、次回。


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